【連載コラム第四回】
多店舗化 :家業と違う事業化の難しさ



今回のコラムはスパイカ株式会社が ①業態 ②多店舗化 ③路面店選び ④商店街の店舗 ⑤ロードサイド物件 ⑥商業施設への出店 とテナントブックへ寄稿する第4回目です。


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前回は【事例1:夫婦2人で営む個人事業主スタイルの収支予測】と【事例2:事業としてオーナーはホール担当、料理長を雇用した場合の収支予測】の比較を行いました。
今回は(事例2)のオーナーが1年後に2店舗を出店(事例3)。
2号店(事例3)の収支予測の算出を行い、多店舗にあたり必要な会計思考について考えていきます。

家業と違う事業化の難しさ




【事例3:多店舗への一歩、2号店を出店した場合の収支予測】


*比較するために、業態、売上、家賃、開業資金の融資返済額、原価率などの諸条件は事例1および2と同じとします。
*人件費の削減を目指し、店長兼料理長の1名の採用、あとはアルバイトを採用します。
*売上げの管理やスタッフのモチベーションの管理(マネジメント)のためにオーナーは1店舗と2店舗目を行き来きしながら運営を行います。
以下の経費を追加します。

・店長兼料理長×1名
⇒350,000円+社会保険料24等級(会社負担分)
・ランチアルバイト×1人/1日(計2名)=時給1,030円×3時間×26日
⇒80,340円(東京都最低賃金:1,013円)
・夜アルバイト×1人/1日(計2名)=時給1,030円×5時間×26日
⇒133,900円(東京都最低賃金:1,013円/21時閉店のため深夜時給発生せず)
・交通費(1人:10,000円)
⇒50,000円
【表3】

ここで、家業の店舗利益と事業の店舗利益を比べてみましょう。


法人を設立し事業化を目指す店舗展開を行う場合、実際にはその他の費用として求人費などの諸々の費用の他、減価償却費が発生します。
また年間の売上に対する決算費用等を考慮するとオーナーが給与として受け取れる金額は高くても30万前後となり、自身の社保等の費用を差し引くと税引き後の当期純利益は売上の2%~3%以下になる可能性があります。
➡5つの利益:①粗利益(売上総利益)②営業利益 ③経常利益 ④税引き前当期純利益 ⑤当期純利益(税引き後当期純利益)

独立開業するにあたり、どのような道筋で店舗を展開して行くのか、自分に合ったやり方について事前に考えておくことが重要です。
1:家業(個人事業主)で店舗運営開始 ➡ 法人設立(事業化による展開)
2:資金・人員を調達し法人設立 ➡ 事業展開

事業における人材の考え方




事業展開(多店舗化)して行く上では人材の確保が重要です。
外食業界はこれまでアルバイト・パート従業員が運営を支えてきました。
一方、国内の人手不足は深刻化し、2019年4月1日からは「働き方改革関連法」の順次施行されています。
また、2021年6月には原則的に小規模飲食店も含めた全食品事業者のHACCPに沿った衛生管理が義務付けられます(注1)。

外食業界は現在、過渡期にあります。
独立し事業展開(多店舗化)して行く上で「4つの構成概念」をしっかり作って行くと同時に、人材育成やマネジメントが重要な経営課題となる時代です。
見方を変えると、4つの構成概念を作りあげる過程で一緒に働く従業員を巻き込み、ファンにして行く位の意識が必要である、とも言えるでしょう。

外食業の廃業率が高い理由の中にコスト管理が杜撰である、人材の確保が出来ない(注2)、といった理由が挙げられます。
1:家業から事業へ、2:最初から事業展開、いずれの場合も焦らず慎重に土台を作っていくことが肝要です。

次回は、乗降客8万人私鉄の駅をモデルに路面店選びについて書きます。

【参考】
注1)公益社団法人日本食品衛生協会:http://www.n-shokuei.jp/eisei/haccp.html
注2)「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」農林水産省 食料産業局
平成30年3月6日:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/hatarakikata_shokusan/attach/pdf/04_haifu-11.pdf

コラムまとめ
第1回 業態   :自分の店舗の業態を把握する
第2回 業態   :店舗をつくる4つの構成概念
第3回 多店舗化 :家業でやるか事業でやるか
第4回 多店舗化 :家業と違う事業化の難しさ
第5回 路面店選び:立地を考える-笹塚駅周辺分析
第6回 路面店選び:物件を考える

田上 百合子(たのうえ ゆりこ) スパイカ株式会社 代表取締役
店舗開発プロデューサー/出店戦略コンサルタント
大手内装会社を経て、美容・外食・小売のチェーンストア本部で店舗開発職及びスーパーバイジングに従事後独立。
独立後は、国内外において店舗出店及び新規店舗事業構築に伴う、出店戦略立案、経済条件交渉、コンストラクションマネジメント、予算管理、運営設計まで一貫した店舗事業プロデュースの他、本部と現場の仕組み化などの経営支援に従事する。