【連載コラム第三回】
多店舗化 :家業でやるか事業でやるか



今回のコラムはスパイカ株式会社が ①業態 ②多店舗化 ③路面店選び ④商店街の店舗 ⑤ロードサイド物件 ⑥商業施設への出店 とテナントブックへ寄稿する第3回目です。


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これまで自分の店舗の業態を把握するために必要な『立地とポジション』『業態を構成する4つの概念』について考えてきました。
今回は【夫婦で上手く経営できた1号店】家業から事業へと多店舗して行く時に考えるべき業態(利益構造)について考えて行きましょう。

1 :『あなたはどうして独立しましたか?多店舗化したい理由は?』




【事例1:夫婦2人で営む個人事業主スタイルの収支予測】

・業態   :定食兼ちょい飲み屋
 11:00~14:00は客単価700円の定食屋、17:00~21:00は客単価1500円のチョイ飲み屋
・ターゲット:サラリーマン
・従業員  :アルバイトは雇わず奥さんと2人で営業
・立地   :サラリーマンが多いオフィス立地
 大手企業の本社や支社があるような私鉄/営団駅を選択(新橋、神田といったメジャーな立地ではない)
 場所は看板が大通りに向けて出せる、少し脇道に入ったあたりの場所(1.5等~2等立地)
 企業の本社や支社あるオフィス立地は、日・祝はお客様が少ないため店舗の定休日

売上と経費を以下のように設定します。
*開業資金として500万円を固定金利2%、60回返済(元本定額返済)で融資を受けた。
・10坪  =20席
・家賃  :30万(坪単価@3万円)
・営業日数:26日(昼×2回転、夜×2回転)
・日商  :700円×20×2=28,000円 1,500×20×2=60,000 日商合計:88,000円
・月商  :88,000×26=2,288,000円

上記の設定で収支を算出すると表1の収支になります。
注1)支払い金利は徐々に安くなりますが、一番高い金額で算出。
注2)減価償却費は経費に含まず。
注3)損益計算表に銀行返済額は本来入りませんが、解りやすくするために算入。

【表1】


アルバイトは雇わず、夫婦二人でランチの仕込みから夜の閉店後片付けまで頑張っていますので、最終利益が夫婦の人件費(儲け)となります。
平均的営業日数で表1の収支が出せれば、オフィス立地特有の休日閑散となるGWや年末年始という売上変動があっても年間を通じて十分にやって行けます。

また、ランチだけや夜3日間だけといったアルバイトを入れて、少し休みを多くすることも可能です。
一方で、GWや年末年始というサラリーマンの休日に合わせて、ゆっくりお休みを取って家族で旅行に行くなど、英気を養うといった時間に使うこともできるでしょう。

ではここから、オーナーがホールを担当し料理長を雇用(事例2)して開業した場合の収支予測を比較して行きましょう。
オーナーは独立にあたり法人を設立、多店舗に向けて一歩を歩み始めました。

【事例2:オーナーはホール担当、料理長を雇用した場合の収支予測】

*業態、売上、家賃、開業資金の融資返済額、原価率などの諸条件は事例1と同じとします。
以下の経費を追加します。
・料理長給料 :300,000円+社会保険料22等級(会社負担分)
・調理補助  :時給1,030円×3時間×26日=80,340円(東京都最低賃金:1,013円)
➡仕込みから閉店までの時間が長いため補助作業員を入れます。
・交通費2名分  :20,000円
・賞与積立  :(年額60万÷12)=50,000円
・消耗品の増額:25,000円➡50,000円

【表2】


最終利益がオーナーの給与になりますが、社会保険料は料理長しか加入していません。
また、法人を設立しているため会社の決算や法人税、年間の売り上げ増減に備えて内部留保(貯蓄)が必要です。
実際にはオーナーが給与として受け取れる金額は20万~30万位が妥当になります。

しかし多店舗化を目指してやる気のあるオーナーは1年後に2号店を開店します。
次回は2店舗目(事例3)を出店した際の収支と、多店舗化のために考えるべきことについて考えて行きます。

コラムまとめ
第1回 業態   :自分の店舗の業態を把握する
第2回 業態   :店舗をつくる4つの構成概念
第3回 多店舗化 :家業でやるか事業でやるか
第4回 多店舗化 :家業と違う事業化の難しさ
第5回 路面店選び:立地を考える-笹塚駅周辺分析
第6回 路面店選び:物件を考える

田上 百合子(たのうえ ゆりこ) スパイカ株式会社 代表取締役
店舗開発プロデューサー/出店戦略コンサルタント
大手内装会社を経て、美容・外食・小売のチェーンストア本部で店舗開発職及びスーパーバイジングに従事後独立。
独立後は、国内外において店舗出店及び新規店舗事業構築に伴う、出店戦略立案、経済条件交渉、コンストラクションマネジメント、予算管理、運営設計まで一貫した店舗事業プロデュースの他、本部と現場の仕組み化などの経営支援に従事する。