今さら訊けない損益分岐点とは?
計算方法や対策まとめ



飲食店を経営していくのであれば、損益分岐点については詳しく知っておく必要があるでしょう。損益分岐点は経営が順調なのかどうかを見極めたいときに役に立つ指標となります。損益分岐点の基本を押さえることで、より計画的な飲食店経営を実現させることができるでしょう。今回は、利益の計算に関わってくる損益分岐点について紹介します。

損益分岐点って何?





損益分岐点とは、営業利益、すなわち売上高から費用を差し引いた金額がちょうど0になるポイントのことです。会計管理において売上を分析するうえで用いられる指標の1つで、損益分岐点を利用した分析方法はCVP分析とも呼ばれます。CVPは、Cost(費用)、Volume(販売量)、Profit(利益)のそれぞれの頭文字を取っています。CVP分析を行うことで、費用と販売量、そして利益のバランスのつり合いが取れるポイントを見つけることができるということです。

例えば、経営する飲食店で損益分岐点がちょうど0になる金額を売り上げた場合、損失は出していないが利益もまた出ていない状態だということになります。店の経営においては、損益分岐点に到達する程度の売上さえ確保できれば現状は維持することができます。また、現状維持ではなく事業の拡大を目指しているのであれば、利益が出るように経営を工夫していかなければならないでしょう。今後の方針を決めるうえでも重要な目安となるので、飲食店の経営者は損益分岐点がどこにあるのかをしっかりと把握しておく必要があるのです。

損益分岐点の分析でわかることは?





経営が赤字だった場合、損益分岐点を分析することで具体的にどこまで売上を上げれば利益を出せるのかということがわかるようになります。目標が具体的に数値化されれば、経営者が行うべき施策はより明確になるでしょう。また、経営が黒字だった場合は「どこまで売上を落としても赤字にならないのか」ということがわかります。その結果、それまでは資金力が不安で乗り出せなかった事業改革を行えるようになるなど、選択肢の幅はさらに広がるでしょう。このように、損益分岐点の分析によって店の現状は浮き彫りになります。「経営自体に問題があるのか」「事業の拡大が行える状況なのか」といったことが把握でき、今後の経営方針を決めるうえでも有効なのです。

損益分岐点の計算方法は?





損益分岐点を計算する際、まずは費用を固定費と変動費に分けて勘定科目ごとに計算をする必要があります。

■固定費とは?


売上の金額にかかわらず、必ず定額で発生する費用のことです。もしも売上がまったく上がらなかったとしても、店の家賃やスタッフに支払う給料などは変わりませんよね。それ以外の代表的な固定費としては、保有資産にかかる固定資産税、福利厚生のための保険料、借金をしている場合はその支払利息などが挙げられます。

■変動費とは?


売上の増減に応じて金額が変わる費用のことです。仕入れる食材の費用や調理を行う際にかかる水道光熱費、営業のスタッフに支払うインセンティブなどが代表的な変動費となります。ただし、固定費と変動費の分類が難しいものも中にはあります。例えば、人件費は一般的には固定費に分類されていますが、繁忙期などには臨時で人を雇い入れているところも多いでしょう。その意味では、人件費は固定費であると同時に変動費としての性質も兼ね備えています。固定費と変動費を厳格に分類するのは難しい部分もありますが、便宜的に分けることで損益分岐点は割り出すことができるようになるのです。

■損益分岐点の出し方は?


損益分岐点を割り出すときは「営業利益=売上高-変動費-固定費」という計算式を用います。損益分岐点の計算では営業利益がちょうど0になるポイントを求めるので、計算式は「0=売上高-変動費-固定費」と変形できます。すなわち、求めるのは「固定費=売上高-変動費」となる点です。この数式が意味するのは、売上高から変動費を差し引いた金額でちょうど固定費を賄えるということです。なお、「売上高-変動費」のことを限界利益と呼びます。この数式に従うと、固定費が100万円で変動費が50万円だった場合、利益を出すためには売上高が150万円以上必要だということになるでしょう。

損益分岐点の公式にはより一般化した別の形もあります。それが「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」というものです。限界利益率は「限界利益÷売上高」、すなわち「1-(変動費÷売上高)」という数式から求めることができます。例えば、変動費が60万円で売上高が100万円だとすると、限界利益率は0.4ということになります。さらに、このときの固定費が40万円だとすれば損益分岐点売上高は100万円ということになるでしょう。また、固定費が80万円で限界利益率が0.2だった場合の損益分岐点売上高は400万円となります。

現状を把握するための計算方法





損益分岐点の分析で経営する飲食店の現状を把握したいときは、損益分岐点比率という指標を利用するとよいでしょう。損益分岐点比率は、「損益分岐点売上高÷実際の売上高×100」という数式から求めることができます。例えば、損益分岐点売上高が100万円で実際の売上高が200万円だった場合、損益分岐点比率は50%となります。この50%という数字が意味しているのは、「たとえ売上が現状の半分まで落ち込んだとしてもまだ赤字にはならない」ということです。

損益分岐点比率が20%だとすれば8割は余裕があるということになり、反対に80%なら2割しか余裕がないということになりますよね。このように、損益分岐点比率を計算して赤字までの距離を具体的に把握することで、経営状態が明確に理解できるようになるのです。

損益分岐点を引き下げる方法





■固定費を下げる!


損益分岐点の引き下げには赤字リスクが避けやすくなるなどのメリットがあります。「損益分岐点=固定費÷限界利益率」という数式からもわかるように、損益分岐点は固定費の金額によって大きく変動します。そのため、損益分岐点を引き下げるためには、家賃や事務費用、人件費などの固定費をなるべく抑えることが重要です。具体的には、「パートやアルバイトを活用して人件費を削る」「借金の返済で支払利息を減らす」などの施策が有効でしょう。また、必要のない資産があればなるべく早めに処分することで固定資産税を削減することができます。

■変動費を抑える!


売上高に対する変動費を引き下げるという方法もまた効果的です。変動費をなるべく抑えることで限界利益率が上がるので、上の数式から損益分岐点が引き下がることがわかりますよね。変動費の中でも見直しの行いやすい材料単価や外注費などの引き下げを重点的に行うとよいでしょう。ただし、過度な変動費の引き下げによって商品の品質が低下する恐れがあるという点には注意が必要です。商品の品質低下によって結果的に売上まで下がってしまっては意味がありません。そのため、変動費の見直しを行う際はどこまで引き下げるべきかをしっかりと見極める必要があるでしょう。

損益分岐点を把握して対策を!





損益分岐点は店の経営状態を把握するうえで重要な指標となります。実際の売上高が損益分岐点売上高を下回っていれば赤字ということになるので、早急に経営方針を改める必要があるでしょう。また、たとえ経営が黒字だとしても損益分岐点比率が100%に近ければ余裕がある状態だとはいえません。そのため、まずは経営している飲食店の損益分岐点を分析して現状を把握することが重要です。そのうえで、必要に応じて固定費や変動費を引き下げるための対策をしていくとよいでしょう。