名板貸しの特徴とは?
フランチャイズとの違いを徹底解説



飲食店を始めるとき、経営を安定させるためには集客が最も大きな課題になります。新規に開店したお店が、最初からお客で満員になるということは、なかなかないものです。しかし、実績があって人気の高い商号を使えば、開店当初から集客も万全といった状況になる可能性もあります。ここでは、既存の商号を使って営業できる名板貸しとは何なのかを詳しく・細かく解説します。

 

名板貸しとは?





「名板貸し」は「ないたがし」と読み、「看板貸し」「名義貸し」とも呼びます。自らの氏名あるいは商号を使用して、営業することを他人に許諾する契約のことです。許諾した人が「名板貸人」、許諾された他人が「名板借人」になります。名板貸しでは、氏名・商号を使用する権利のみが許可されるのが一般的です。

 

【名板貸し側】 名板貸しに必要な責任とは?





「営業しているのが名板貸人だと誤認した者」と「名板借人」との取引の債務を、名板貸人と名板借人は連帯して弁済する責任を負うのです。名板貸しをした場合、外観を信用して取引した者を保護する外観法理に基づき、その者を保護して取引の安全性を高めることが趣旨です。これは商法第14条にて規定されています。

この商法第14条が適用されるのは、「外観の存在」「外観作出への帰責性」「外観への信頼」の3つの要件を満たしたときです。

「外観の存在」


名板借人が名板貸人の商号を使っていることを意味します。この場合、特段の事情がないかぎり、名板借人と名板貸人の営業内容は同種であることが必要です。

「外観作出への帰責性」


名板貸人が名板借人に自分の商号を使うことを諸諾していることです。明示の許諾だけでなく、黙示の許諾と認められた場合も適用になります。
たとえば、商号を使うことを許諾しているわけではないが、自分の店舗の一部を他人に貸して営業を認めていれば適用されるということです。

「外観への信頼」


名板借人と取引した相手が名板貸人として営業していると誤認している場合になります。取引した相手に重過失がある場合は、名板貸人は債務を弁済する責任を負いません。
ただし、取引をした善意の他人に対しては、名板貸人は名板借人と連帯して弁済する債務を負わなければならないのです。債務の返済だけでなく、損害賠償や原状回復義務などの責任も発生します。

名板借人の取引相手が、名板貸しの事実を知っていたなど悪意があったと認められた場合は、名板貸人は債務について弁済する必要はありません。しかし、名板貸人が悪意を立証しなければならないのです。判例では、名板借人の取引相手の誤認が過失の場合は名板貸人に責任が生じ、重大な過失の場合は名板貸人に責任が生じないとなっています。

 

【名板貸し側】 商号の譲渡はできるのか





営業を続けつつ、商号のみを他者に譲渡することはできません。これは商法第15条第1項にて規定されています。そのため、商号のみを他者に譲渡する場合は営業ごと譲渡するか、営業を廃止して譲渡する必要があるのです。また商法第15条第2項において、当事者間(譲渡人と譲受人)では譲渡の意思表示のみで可能ですが、第三者への対抗策として登記が必要となります。

登記をしていなければ、悪意の第三者にも対抗することはできません。これは、商号を重複して譲渡した場合、登記している者を優先するということです。営業を譲渡した商人は、当事者の別段の意思表示がないかぎり、同じ市町村の区域内や隣接する市町村の区域内では、営業を譲渡した日から20年間は同一の営業はできないことになっています。商業登記法第30条は、下記のように規定されています。

  1. 商号の譲渡による変更の登記は、譲受人の申請によってする

  2. 前項の登記の申請書には、譲渡人の承諾書及び商法第15条第1項の規定に該当することを証する書面を添付しなければならない

  3. 商号の相続による変更の登記を申請するには、申請書に相続を証する書面を添付しなければならない


営業の用に供する財産につき最終の営業年度にかかる貸借対照表(最終の営業年度がない場合にあっては、開業時における貸借対照表)に計上した額が50万円を超えない小商人の場合は、商業登記をすることができないため、商法第15条第2項の規定は適用されません。

 

【名板貸し側】 名板貸しの注意点





名板貸しは、営業の免許を持つ者が無免許者に名義を貸す方法として用いられることもあります。この場合、営業免許を取得していないことにより公益の害になるおそれがあるので、契約そのものを禁止していることもあるのです。質屋営業法第6条では、「質屋は、自己の名義をもつて、他人に質屋営業を営ませてはならない」と規定されています。また、古物営業法第9条では、「古物商又は古物市場主は、自己の名義をもつて、他人にその古物営業を営ませてはならない」と名義貸しを禁止しているので注意が必要です。

 

【名板借り側】 名板貸しとフランチャイズの違い





「名板貸し」と「フランチャイズ」の違いは、「許諾される権利」と「責任の範囲」です。名板貸しは氏名・商号のみを貸し出すのが基本で、ノウハウやサポートは受けないのが一般的な契約になっています。たとえば、名板貸しで飲食店を開店した場合、借りた飲食店名で営業することはできますが、材料の仕入れ先や調理方法などの指導を受けられるわけではありません。フランチャイズでは、商号、商標、サービスマークを使用する権利、指導や援助などのサポートを受ける権利、商品やサービスなどのノウハウを利用する権利があるのが一般的です。

責任の範囲においては、名板貸しの場合は商法第14条の規定で名板貸人は弁済の責任を負いますが、一般のフランチャイズ契約の場合、主催者は責任を負いません。名板貸しは閉店した場合の債務を貸した側も負担しなければなりませんが、フランチャイズの場合は加盟店オーナーのみの責任です。これは、フランチャイズ契約の際に、本部事業者と加盟店が別の事業者だとわかるような契約が結ばれているためです。また、名板貸しは貸し主にロイヤリティを支払うという決まりはありませんが、フランチャイズの場合はフランチャイズ企業に対してロイヤリティを支払わなければなりません。

 

名義貸し・借りをするなら要検討!





名板貸しをする場合、氏名・商号を貸す側は事業者としての責任を負わなければなりません。借りる側は、「フランチャイズのようにノウハウやサポートを十分に受けられない」といったデメリットもあります。名板貸しは開店当初から集客効果なども期待できますが、名板貸人に責任を負わせることがないよう慎重に検討するべきでしょう。